第13章 宇宙の始まりと終わり
標準宇宙論であるビッグバンやインフレーションは一般相対性理論が基礎になっているが、本仮想物理では相対性理論を否定している為、宇宙論も異なっている。 本仮想物理では、全ての空間に重力子と重力素(10章 重力とは何か?)が充満しているが、エネルギーが≒0で、さらに存在空間を持たないため存在が認知できない。 重力素は重力因子を放出しており、時間の経過と供に質量を失い、最終的に殆どが重力子となり均一化する。 この殆どが重力子で占められる空間を重力子空間と呼ぶ。
【宇宙の始まり・泡宇宙】
宇宙開闢前の原始宇宙には重力子空間が、現在知られている宇宙をはるかに超え無限に広がり、殆どエネルギー0の状態で均一に存在し安定していた。
しかし長い時間をかけ重力子空間の中に存在する重力素と重力子の引き合いにより、原始宇宙の中に重力子空間濃度の疎密が発生する。
こうした濃度の疎密が地上の気象における高気圧や低気圧のような領域を生成し、その高気圧に相当する領域でさらに局所的に濃度が集中する空域が出来る。


原始宇宙の重力子空間では重力子が殆どを占めるが、重力子は重力因子を放出しないため、空間の重力因子濃度は極めて希薄である。
その中で、僅かに残る重力素から放出された重力因子により、近隣の重力素や重力子が引き寄せられ接近を開始するが、重力因子の濃度が低いため慣性抵抗は殆ど発生せず、接近速度は超光速となる。
重力因子の速度は無限であり、その到達距離にも制限がないため、ひとたび重力素の衝突が始まると、連鎖衝突は瞬時に拡大する。
無限に広がる重力子空間のある一点で衝突が発生し、その一点を中心に重力素の大きな塊が出来、その塊からまた重力因子が放出され、相乗的に重力素の拡大が続いて行く。
衝突の中心点からの重力因子による重力は、重力素塊に向く引力のみとなるため、慣性抵抗は発生せず、重力素同志は超光速で衝突する。
この結果、中心となる重力素塊に加速度的に重力素が集まり巨大な衝突を起こす。
超光速の重力素同志の衝突は巨大なエネルギーを発生させ、重力子の分極や分離を起こし、陽子、中性子、電子、光が生成され、竜巻回転が始まり物質が生成される。 点空間であった重力素が電子や陽子となり、竜巻回転原子により物質となり膨大な空間を占めるようになると、一転して爆発的な拡大に至り小宇宙が始まる。
宇宙初期に宇宙のどこかで最初の小宇宙が発生すると、その小宇宙の膨張に押しのけられ周囲の宇宙空間の重力子空間濃度が高まり、連鎖的に小宇宙が次から次へと生成される。 こうした小宇宙はお湯が沸くように複数の個所で次々に発生するため、個々の小宇宙を泡宇宙(バブル宇宙)と呼ぶことにする。
たぶん、宇宙ボイドはこうした泡宇宙の爆発の中心であり、銀河フィラメントはその爆発で生成され吹き飛ばされた後の物質の吹き溜りであろう。

宇宙の創造は、重力子空間の濃度が一定の閾値を超えた領域で一斉に起こるため、広がる速度は光速に縛られることはなく、現在光によって観測可能な宇宙の範囲を遥かに超えている。
ビックバン理論では始まりの一点が存在し、その一点がインフレーションで瞬時に拡大し宇宙が生成されたとするが、本宇宙論では、重力子空間が続く限り、泡宇宙が次から次へと生成されるため、宇宙の中心は存在しない。
ビッグバン理論では138億年前にビッグバンにより宇宙が発生しインフレーションにより一気に拡大、その後インフレーションの終了後宇宙の晴れ上がりにより物質が生成されたとし、従って宇宙の果ての生まれたての銀河は小さいと考えられたが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡により、最果ての宇宙創造初期と考えられる領域にも大きな銀河が観測され、ビッグバン理論と矛盾していると大騒ぎになった。
本宇宙論は、1点から拡大するのでなく重力子空間濃度の条件が閾値を超えた複数の領域で泡のように小宇宙が生成されるため、138億年というビッグバン理論による宇宙誕生の縛りもなく、これを超える宇宙の果てで大きな銀河が生成されていても不思議はない。
【宇宙の終わり・多元宇宙】
宇宙をこのように考えると、宇宙とは我々の住む宇宙に限定されるものではなく、他の宇宙が存在すると考えた方が自然である。
現在の我々の住む宇宙は拡大を続け成長しているが、いずれ重力子空間の濃度の低い領域に達し成長も終了する。
成長を終えた宇宙は徐々に拡散し個々の物質も崩壊していく。
宇宙の拡散とともに重力因子濃度も希薄となり、全ての物質内の粒子の竜巻回転は停止し、重力素から電荷子がはぎ取られ、むき出しの重力素となる。
むき出しの重力素は重力因子を放出し続け、最終的に重力子まで縮小し安定する。
すなわち、宇宙の終焉においては、殆どが重力子で構成される無限の重力子空間に還元され原始宇宙に戻る。
宇宙の終焉は、また新たな宇宙の始まりである。
【時間の始まり】
原始宇宙は多数の重力子と僅かな重力素からなるが、空間の重力因子濃度は極めて希薄なため、重力素には慣性抵抗が発生せず、引力による引き合い速度は無限又は超光速である。
時間とは、竜巻回転原子の運動の状態のことであるが、重力素の速度が無限で竜巻回転原子が存在しない原始宇宙では、運動による時間は発生しえない。
しかし、ひとたび、重力の引き合いによる重力素同志の衝突が起こると、雪だるま的に重力素の衝突が超光速で行われ、その膨大な衝突エネルギーにより物質が生成され泡宇宙が始まる。
多数の泡宇宙が発生し重力素から重力因子が放出され、重力因子濃度が高まると、物質には慣性抵抗が発生し、超光速は減速され近隣宇宙では光速度Cが上限となった。
慣性抵抗により速度が生まれ、竜巻回転原子の運動が始まり、時間が始まる。
時間とは原子の竜巻回転の運動の状態であり、近隣宇宙での運動はCという一定の上限速度を持つようになった。
すなわち、重力因子濃度が一定になったため、速度の上限が一定値Cとなり、時間も一定の速度で流れるようになった。
【宇宙の超巨大構造】
標準宇宙論では、重力は光速の限界を持ち、重力で構成可能な宇宙構造の理論的上限は12億光年とされ、理論的にこれ以上大きな構造は存在しないとしているが、近年この理論的上限を超える宇宙構造が発見されている。

2024年ビック・リング直径13億光年(2024年1月11日 アメリカ天文学会(American Astronomical Society))

球または球の一部に見えるこれらは、泡宇宙の残骸であろう。
泡宇宙が爆発し拡大する際は、中心の一点から爆発しきれいな球となる場合や、少しずれて爆発し螺旋を描きながら拡大する等複雑なパターンが存在するだろう。
また、泡宇宙は、重力によって集まったものではなく、爆発によって吹き飛ばされて出来ている為、12億光年という大きさの限界はない。
ホオレイラナは泡宇宙の跡そのもの。
ジャイアント・アークは最初の泡宇宙が発生した後、これを別の泡宇宙が追いかけて発生し、元の泡宇宙の弧を吹き飛ばし一部のみが残ったもの。
ビック・リングは螺旋になっているようだが、これは、泡宇宙爆発時に中心がずれて爆発したため、泡宇宙全体が旋回を伴い移動しながら物質を吹き飛ばした結果であろう。
【ダークマター】
本仮想物理でダークマターに相当するのは重力素と重力子である。
一般物理では、「渦巻銀河の回転速度と万有引力の法則のズレ」や、「超重力レンズ効果(遠方の銀河からの光がブラックホールなどの重力源で屈折する現象)」がダークマターの存在根拠とされている。
しかし、本仮想物理では、「渦巻銀河の回転速度と万有引力の法則のズレ」は慣性抵抗が原因であり、「重力レンズ効果」は光の質量が原因と考えており、ダークマターに相当する重力素や重力子がこうした現象の原因ではない。
【ダークエネルギー】
ビッグバン理論では、現在も宇宙が膨張しているという観測結果を説明するため、排斥力を持つダークエネルギーという存在を提唱している。 しかし、本宇宙論では、原始宇宙(重力子空間)は無限の広がりを持ち、この広がりの中で泡宇宙の生成が今も続いているため、宇宙が膨張しているものと考えている。 従って、本宇宙論ではダークエネルギーを否定している。
【宇宙マイクロ波背景放射】
宇宙マイクロ波背景放射は、天球上の全方向から均等にマイクロ波が観測される現象であるが、これがビッグバン理論を裏付けるものと解釈されている。
ビッグバン理論では宇宙はインフレーションによる爆発的な拡大の後も、ダークエネルギーの排斥力により緩やかな拡大を続けているとされ、背景放射がこの爆発の証拠であるとしている。
しかし、本宇宙論における宇宙マイクロ波背景放射の原因は異なっており、宇宙の外縁で今だ生成され続ける泡宇宙が発生した電磁波と考えている。
【宇宙背景重力波】
2023年6月パルサー・タイミング・アレイと言う手法で背景重力波を検出した。
背景重力波の発生源は、超大質量ブラックホールの連星系と考えられている。
しかし、本仮想物理では、背景重力波の主たる発生源は、宇宙の外縁で現在も生成され続けている泡宇宙だと考えている。
重力因子(重力波)の速度は無限と考えているため、背景重力波の検出は、今現在も泡宇宙が生成され続けている証拠と考える。
【宇宙の赤方偏移】
全ての遠方の宇宙は観測により赤方偏移し遠ざかっていることが観測されているが、これを泡宇宙理論で説明する。 天の川銀河は泡宇宙から吹き飛ばされた物質が集まった物質で出来ており、泡宇宙の中心であるボイドから離れる方向に高速で移動している。 天の川銀河の中心方向が泡宇宙の反対側と仮定すると、銀河の中心方向には銀河バルジがあり観測不能である。そこでバルジと反対の銀河外縁方向に限定されるが、そこは泡宇宙の中心であるボイドの方向となり、天の川銀河はそのボイドの中心から遠ざかる方向に吹き飛ばされているため、すべての銀河は天の川銀河から遠ざかって行く。

【ハッブル定数の緊張】
宇宙の膨張率を示すハッブル定数には、超新星爆発による比較的近傍銀河の推定値73km/s/Mpcと、宇宙背景放射による超遠方銀河の推定値67.4 km/s/Mpcに有意な差が見られ、これをハッブル定数の緊張(ハッブルテンション)と言う。 これは、天の川銀河近傍における宇宙の拡大が、泡宇宙の爆発により天の川銀河が吹き飛ばされて自身が後退する速度Aと、泡宇宙の反対側の銀河が天の川銀河と逆方向に吹き飛ばされる速度Bの合算値、A+Bであるのに対し、超遠方銀河ではBに相当する成分が平均化されB=0となり速度Aのみになるためと推定する。
【グレートアトラクター】
我々の銀河を含むおとめ座超銀河団は、銀河中心バルジ方向の彼方にある未知の巨大重力源に引き寄せられていると言われており、この重力源をグレートアトラクターと呼んでいる。 しかし、本泡宇宙論では、おとめ座超銀河団の移動はグレートアトラクターに引き寄せられているものではなく、泡宇宙の爆発によりおとめ座銀河団自体が吹き飛ばされて移動している結果と考えている。 従ってグレートアトラクターを否定する。
【LRD、クエーサー】
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が宇宙の最果てでLRD(Little Red Dots)と言う大きさが500光年以下の小さい赤い光源を多数発見した。 LRDについては、巨大ブラックホール説と高密度の星生成説の2つの説が考えられているが正体は不明である。 本泡宇宙論では、LRDを泡宇宙の誕生の瞬間と考えており、星生成説と同じである。 大小さまざまの泡宇宙が生成されるが、小さな泡宇宙が圧倒的に多いだろう。 LRDの星は、現在は高密度でも、爆発による離散で何れ希薄化する。 また、クエーサーは、全天で群を抜いて明るく、最も強力なエネルギーを放出している天体であるが、一般論では超大質量ブラックホールがエネルギー源になっているとされる。 クエーサーも泡宇宙で、LRDとは規模が違うだけではないだろうか。
【ビッグバン理論における「バブル宇宙」】
標準宇宙論では我々の宇宙はビッグバンで生まれたと考えているが、ビッグバン理論では宇宙の膨張スピードを説明できず、ダークエネルギーという排斥力を持つ未知のエネルギーを考えてきた。 しかし、ダークエネルギーは、いまだその存在が確認されておらず謎のままである。
そこで近年、宇宙の膨張をダークエネルギーに頼らずに説明できる理論として、「バブル宇宙」という考えが提起されている。 これは、我々の宇宙とは異なる宇宙が、やはり同じようにビッグバンで生まれ、その宇宙と我々の宇宙が合体しつつあるという概念である。 この宇宙の合体によってダークエネルギーに頼らずとも宇宙の膨張を説明出来るため、この別の宇宙を「バブル宇宙」と呼んでいる。
標準宇宙論における「バブル宇宙」と本仮想物理の「泡宇宙」は呼び名は同じであるが、ビッグバン理論の「バブル宇宙」が宇宙同志の衝突であるのに対し、本仮想物理の「泡宇宙」は宇宙の内部で生まれる無数の小宇宙を示すもので全く異なる概念である。